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消化器がん、特に消化管と呼ばれる食道、胃、大腸は検査法の進歩により早期で見つかるケースが増えてきました。

内視鏡検査、超音波や拡大観察機能をもつ特殊内視鏡検査、エックス線検査によりがんの場所、広さ、深さを調べ、超音波検査、CT検査などでリンパ節などに転移(飛び火)があるかどうかを診断し進み具合(病期、ステージ)を決めます。進み具合の程度で治療法は内視鏡的切除術、腹腔鏡下手術、開腹手術、抗がん剤治療、放射線治療等決定されます。

超音波検査やCT検査でリンパ節に転移がないと判断された早期がんは、おなかを切らずに内視鏡でがんを含む粘膜だけを切り取る内視鏡的治療が用いられます。

内視鏡による消化器がんの治療は、開腹手術に比べおなかに傷がつかず、臓器を残すことができる、入院期間が短くてすむなど患者さんにとって体にやさしく経済的にも負担が軽い治療法です。

この治療法はすでに20年以上前から行われており、従来からスネアと呼ばれる金属の輪を使って切り取る方法(内視鏡的粘膜切除術;EMR)が行われていました。

内視鏡的粘膜切除術EMR

この方法は、大腸のポリープを取るときなどによく用いられており、1cm程度までの小さい腫瘍に対しては有効ですが、一度に取れる大きさが限られており、大きな腫瘍に対してはいくつかに分けて切除するしかなく、腫瘍を確実に取れたのか顕微鏡で検査するときに判断できないという欠点がありました。

現在では、専用の処置具が開発され、より大きな腫瘍も切り取ることができるようになりました。内視鏡の先端に電気メスを出して切り取っていく方法で、内視鏡的粘膜下層剥離(はくり)術(ESD)と呼ばれています。

腫瘍をひとつの塊で取ることができ、完全に切除できたかを正確に診断することができます。

内視鏡的粘膜下層剥離(はくり)術(ESD

当院では2002年から導入し、当初胃の腫瘍に対してのみ行っていましたが、その後EMRで取りきれない大きさの食道、大腸の腫瘍に対しても導入し、現在までに300名を超える患者さんに対して治療を行っています。

それまでは外科的手術でしか取ることのできなかった腫瘍を、おなかを開けずに治療することができるようになりつつあります。

内視鏡で治療できるがんは、リンパ節などに転移する可能性のないものが原則となります。胃においては、がんが一括で取れるものと日本胃がん学会で決められています。

●具体的には

1)がんの深達度(深さ)が粘膜層と呼ばれる一番浅い層にとどまっているもの

2)2cm以下の大きさで分化型がんと呼ばれる、がんの細胞の形や並び方が胃の構造を残したがんで潰瘍を合併しないものが対象となっています。

現在ではESDの進歩により病変の大きさや潰瘍の有無に関係なく適応が広げられつつあり

1)2cm以上の大きさであっても潰瘍がなく表層(粘膜層)にとどまっているもの

2)潰瘍があっても3cm以下の大きさで表層(粘膜層)にとどまっているもの

3)3cm以下の大きさで粘膜層の下にある粘膜下層にわずかにひろがっているもの

などにも適応が拡がってきています。

ESDは手術室で全身麻酔をして行うのではなく、内視鏡室で鎮静剤や鎮痛剤を使用し、完全に眠っていただいた状態で治療を行います。所要時間は1時間程度ですが大きな腫瘍の場合は数時間かかることもあります。

粘膜の下には血管が多数あり出血は避けられませんが、しっかり止血しながら治療を進めます。胃の壁の厚さは5から7ミリ前後であり約5%の確率で穴があくことがあります。その場合は内視鏡で穴をふさぐ処置を行いますが稀に外科的手術が必要になる可能性もあります。治療後は経過が順調であれば2日目より食事開始となり1週間ほどで退院となります。

ただし、病理組織検査の結果で予想よりがんが深くもぐっていた場合には、後日外科的手術が必要になってきます。

胃よりも壁が薄い食道やさらに屈曲の多い大腸はESDを行うにはより慎重に行う事になりますが年々その数は増加してきており現在300名を越える患者さんに行っています。

早期に見つかれば怖くない消化器がんですが、やはり定期的に検査を受けていただくことが望まれます。