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外科的治療

肝臓がんは、大きく肝実質細胞(肝臓の代謝・合成機能をつかさどる細胞)より発生する肝細胞がんと非実質細胞より発生する胆管細胞がん、さらに他臓器がんよりの転移により発生した転移性肝臓がんに分けられます。各々治療法に違いがあり以下これらの特徴を踏まえた外科的治療につき説明します。

●肝細胞がん

肝臓がんの中で最も頻度の高いもので、原因としてC型肝炎・B型肝炎が多くを占めることはよく知られています。近年、これらのウィルス性肝炎の治療・予防により今後減少が予想されますが、最近、非B非C肝炎もしくは肝炎のない正常肝臓にも肝炎が増えてきており検診等の発見体制が必要と思われます。不幸にして肝細胞がんを発症したとき、その治療法の選択は、肝機能の状態にて決まります。外科治療である肝切除術は肝機能のよい人が適応となり肝機能の悪い人には内科的治療が選択されるのが現実です。肝切除は、腫瘍の大きさ・局在により切除量・肝臓に与える侵襲が変わってきます。肝臓の再生能力はすばらしく、肝予備能が十分なとき肝臓全体の8割近くの切除を耐術し、肝再生能力によりその大きさは1年あまりで元に戻ります。しかし、肝予備能の低い状態では、肝切除後、肝臓の再生ができず、肝臓が疲弊し肝不全になることがあります。この肝切除に対する肝臓の耐術能の評価を肝予備能評価と呼び、色々なものが提唱されています。最も一般的なものは、肝障害度評価と呼ばれるもので、A・B・Cの順に肝予備能が悪いものと判断されます。一般的には肝予備能と腫瘍の条件より手術適応を決めています(図1)



また、当院では、肝細胞に特異的に発現されるアシアロ淡白質レセプターの量をラジオアイソトープを用いたシンチグラムにて評価する方法で肝予備能評価を行っています。これまでの肝切除結果からみて正確な肝予備能評価が行えていると思います。肝切除法:基本的に肝細胞がんは、門脈血流にのり転移すると考えられる。肝切除は、腫瘍所属門脈域を切除する系統的肝切除が基本となります(図2)



●胆管細胞がん

肝臓内の胆管上皮細胞より発生した肝臓がんです。悪性度は、肝細胞がんより強く、より広い範囲の肝切除と肝門部リンパ節の切除が根治的切除の条件となります。検診で早期発見をすることが難しいのが現状です。しかし、肝細胞がんとは違い背景肝に障害がないことがほとんどであるため、拡大肝切除にて根治切除の可能性もあります。検診による早期発見が望まれるがんです。

●転移性肝臓がん

原発巣が肝臓以外にあり転移により肝臓に腫瘍ができたものです。切除の適応は、原発巣の切除がされているか同時切除がされていること。他に切除不能な転移巣がないことが条件となります。肝臓は、血流が多くかつ肝臓の間質組織が異物のフィルターとなって免疫の中心を担っていることもあり転移を形成しやすい状態にあります。以前では手術不能と考えられた肝臓転移も化学療法(抗がん剤治療)の進歩で縮小し切除可能な状態に持っていける症例も出てきました。今後、切除の適応は広がるものと思います。


(最後に)肝臓がんは様々な種類の治療がある疾患です。私達は外科医ですが、手術のみでなくすべての治療法を駆使して、患者様の生活の質を落とさずに病気を克服できる治療法を個々の患者様とともに模索していく姿勢で、日々の診療に臨んでいます。お気軽に御相談ください。