「三分三十秒。」
ゴールと同時に、先生の大きな声が、グランド中に響きわたる。「三分三十秒」心の中でつぶやいた。自分でも耳を疑うような速さだ。陸上部に入部してすぐに、1kmのタイムを計った時は、確か「四分七秒」だったはず。毎日の成果が実り、三十秒以上も縮めることが出来た。
「やったーー。でも、まだまだいける。もっとタイムを伸ばせるはず。」
次の練習への意欲がわいてきた。もっと練習をしなければ。でも、今までみたいに、ただがむしゃらに走るだけではだめだ。効率的な練習をしないといけない。
でも私は、効率的な練習を知らなかったので、図書館などを利用して調べてみた。その中に練習法とは別に、『マラソンン選手の食事』というものがあった。その本で私は、ご飯に秘められた力を知った。
本には、「スタミナ競技は、糖質と脂質を酸素で燃やし、エネルギーを発生させる。」と記されていた。そして、「脂質は、体内にあるけれど、糖質は無いので、ご飯などの炭水化物を食事で積極的に、取り入れるようにする。」とも記されていた。この本で私は、長距離を走る秘訣はご飯だということが分かった。
でも、我が家の食卓では・・・・・・。父が私に、
「ちゃんと、ご飯を食べれ。」
と怒り、私が父に、
「ご飯より、おかずが食べたいのに。」
と反抗する始末。なんと、私は日本人にもかかわらず、あまりご飯が好きではないのだ。それは、ご飯が無味だと思うからだ。私が、一度の食事に摂取するご飯の量は、拳の3分の2程度。今まで私は、おかずばかりを食べご飯はほとんど食べていなかったのだ。
これでは、長距離を走ると疲れてしまい、ラストスパートで失走してしまう。このままでは、絶対絶命の危機だ。これから、もっともっとタイムを伸ばしていくためには、しっかり、ご飯を食べなければいけない。
私は、その日からご飯の食べる量を増やしていった。でも、ただあまりかまずに飲み込んでしまったら、『でんぷん』として体内に吸収されてしまうので、よくかんで『でんぷん』を『糖質』に消化させるように心がけた。一口三十回以上かむと自分の中でルールを決め、かみ続けた。すると、不思議なことに、かむのを三十回を超えると、今まで無味だと思っていたご飯が、甘く感じてきた。しかも、かめばかむ程甘みが増してくるのだ。ご飯ってこんなにもおいしい食べ物だったんだ。初めてご飯のおいしさを味わった。そして、あまり好きではなかったはずのご飯が、だんだん好きになってきたのだ。ご飯のおいしさを知ってから、一度の食事で摂取するご飯の量が、今までの二倍以上である、拳2個程に増えた。
すると、まだタイムとしては、成果は表れていないけれど、走っていると今までとは違い、体の中から力がみなぎっている気がしてきた。走れば走る程、体が
「もっと走れ、頑張れ。」
と訴えている気持ちがした。きっとこの調子で、ご飯をたくさん食べることと、練習を続けると、タイムとしても大きな成果がでるはずだ。その日が楽しみだ。
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